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わがロータス蓮の華

『千年女優』 リバイバル上映で、十数年ぶりに観た。 * 藤原千代子の数多の出演作における、反復に次ぐ反復。作中に現れるあやかしの回す糸車のイメージは、それを停滞でありまた呪縛であるかのように見せている。 しかしその実、反復は、コイルのようなは…

いずれの人にもすべて、その人のデジモンを

『デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING』 友達がいっぱい欲しいというルイの願いを聞いたウッコモンは、世界中の人をルイと同じ境遇にすることが、ルイの願いを叶えることだと思い込み、すべての人にパートナーデジモンを与えようとする。 4歳の誕生日…

47ハムザイ

『Winny』 社会的な問題、警察組織の問題等がさまざま絡み合うように構成されてはいるが、軟弱な私はただ、金子勇という魅力的な人がいたことの記録の映画と思いたい。数々の遺品を映画に登場させること。当時の時代のPC環境や画面表示の再現。さらに遡って…

ぼくに妹はいないよ

『天上の花』 三好達治への共感・理解を全くしかねるように作られていて、それは良かったように思う。 売れない、お金にはならない価値というものがあるはずなんだと言う一方で、心の離れた妻を引き留めるためにはお金を渡すことしか思い付けないアンビバレ…

シシャモかカラフトシシャモかはどっちでもよくない

『さかなのこ』 彼女を紹介するために、ヒヨはミー坊をホテルのレストランに呼び出していた。テレビ業界で働くヒヨは、売り出し中のタレントと付き合っているのだった。 三人での会食が進むうちに、魚博士になりたいというミー坊の夢に話題が及び、ヒヨの彼…

袋小路の再会

『犬王』 異形のために父から疎んじられ、猿楽の家に生まれながら舞台から遠ざけられて育った子が、周囲に群れ集う平家の亡霊の声を聞く。やがて自らを犬王と名乗り、亡霊から聞き拾った、いまだ世の誰にも語られたことのない平家の物語の数々を、独自に新作…

祈りの装置

『やがて海へと届く』 すみれの遺品を渡すために、すみれの実家を訪れた真奈と遠野。それを迎えた母親は言う。すみれが中学生の頃から対立するようになり、娘のことをどこかしら遠く感じていたが、いなくなったことで、今はかえって近くなったように思う。あ…

天涯を比隣とする

『グッバイ、ドン・グリーズ!』 中学の課外学習のときにチボリがロウマのカメラを借りて撮った一枚の写真。それに目を留めたドロップに、こんなきれいな青に染まった写真を自分は撮れないとロウマは言う。しかしドロップはその言葉を訝って、この写真でチボ…

竜とそばかすのバーストリンカー

『竜とそばかすの姫』 仮想世界〈U〉で活動する自らの分身、〈As〉。少し悩んだ末、鈴はそれを「Bell(ベル)」と名付ける。鈴だからベル。素朴な名付けだ。 ベルがその歌声を披露して間もなく、〈U〉はベルの話題で持ちきりになる。その中で、誰からかこ…

「いま!いま!いま!イマジネーション」

『ごっこ』 ヨヨ子が「BB弾!」と言って抓んだBB弾をじっと突き出す、そのたびにボクは「お前はそれ見つけるのの天才やなー」と返す。それは一度として「もうええわ、それはもうわかったわ」などと省かれることがなくて。 このような、決め事のようなやりと…

「背筋をのばして/あなたらしさ ピカイチに磨きなさい」

『わたしは光をにぎっている』 自分は光をにぎつてゐる いまもいまとてにぎつてゐる 而もをりをりは考へる 此の掌(てのひら)をあけてみたら からつぽではあるまいか からつぽであつたらどうしよう けれど自分はにぎつてゐる いよいよしつかり握るのだ あん…

過ぎたものたち、愛するべき人

『嵐電』 ときに思いと裏腹に、人と人とは疎遠になる。 * この映画に登場する三組の男女は、妖怪電車に出合い、いずれも突然の別れを迎える。 嵐電に現れる狐と狸の妖怪電車。それを目撃すると、大事な人と別れてしまう。そんな都市伝説があるという。しか…

エボ鯛の開き

『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』 『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』を観てシナリオえーだば創作術のミュウツー周りの記事を読み返してたら昨日という日が終わった。 上層部は、アニメを派手に見せるため、CGを使いたかったらしいが、日本のCGは、当時、発…

ごま塩ゲマ、髷ゲマ、マグマゲマ

『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』 私はウイルスだ、とウイルス自身が言っていることをそのまま真に受けてよいものか。 ウイルスと称するものが現れたのが突然なら、ワクチンだというものだって勝手に用意され渡されたにすぎない。それを渡されるままに…

「ああーコジマになりてぇー」

『薄暮』 「震災以後」の齎すべき、イマジネーションの決定的な変容。東日本大震災の直後は、それを競うような言説が賑わっていた。しかし、震災以前であれ以後であれ、変わらないものがあるはずだと、この映画は言っているように思える。 * 震災によって全…

かいじゅうこどもの海と空

『海獣の子供』 琉花が、自分の手を引く海の手の熱さを感じ、守ってあげなくちゃ、と強く思うこと。その直後、台風の中を傘も差さず海と二人歩いていく琉花を、漁港の人がみとめること。 傘を差さないのは、先ほどの決意がたちまちそういう形で現れたのだと…

先輩はえらい

『劇場版 響け♪ ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~』 キャストの中に寿美菜子の名前を見つけたので少し元気が出て、観に行くことにしました。 * 部の今年の目標の決を採る場面では、あすか先輩の不在に泣きたくなりました。一方、とにかく上手くなりたい…

地獄に仏の他人

『えいがのおそ松さん』 童貞。クソニート。そう言って自らを貶めることにとっぷり馴染んだ六つ子たち。ギャグ漫画の世界とは、いわば閉じた世界だ。自らに飽いてよしとする世界だ。 そんな六つ子たちにも、そのあり方に思い悩んでいた時期があった。 * 高…

叶わぬ非望

『PSYCHO-PASS Sinners of the System』Case.3「恩讐の彼方に__」 敵討ちのため、戦う術を狡噛に付いて学ぶテンジンは、父の遺品の中から見つけていた日本語の本の読み方も同時に教わることになる。その本が『恩讐の彼方に』(菊池寛)だった。 短編ながら…

モンストル・シャルマン

『メアリーの総て』 パーシーはメアリーのお腹の子を女の子だと決め込んでいたが(そして実際そうだったが)、『フランケンシュタイン』執筆中のメアリーは、自分が生み出しつつあるものが何であるのか、はっきりとは分かっていなかっただろう。生み出すこと…

魔法が使えない子は

『映画しまじろう まほうのしまのだいぼうけん』 ここ一番の大事なときに、しまじろうを応援するのにステッキの力を使わないのは、おなじ小道具を用いるにしても、プリキュア映画とは一線を画するところだ。ステッキを媒介して目に見える力に変換しなくとも…

都築杢之進の消失

『斬、』 人を斬ることが出来ない、女を抱くことが出来ない、江戸への出立の日に熱を出して倒れる。どこまでも手前に留まる、留まってしまう者としての杢之進。 であればこそ、市助たちの敵討ちに立ち上がろうとしないことを罵るゆうの声は、杢之進の鼓膜を…

ダダ100年、はいから100年

第1回ダダの夕べにおいて、「ダダは僕らの強烈さだ」と叫ばれたのが1916年(「ムッシュー・アンチピリンの宣言」)。「ダダは何も意味しない」という有名なフレーズを含む「ダダ宣言1918」はもちろん1918年。これらから数えて、およそ100年が経過したことに…

峰子ちゃんはパン2○見え!

映画『若おかみは小学生!』 おっこだけにウリ坊たちが見えること。 おっこがたびたび、両親をまだ生きているもののように見ること。 死んだ人はどこへ行くのか。私たちの心のうちに、というのは一つの考え方だろうが、それとはまた別の事態を、この映画は示…

「何もない」がない

『劇場版 のんのんびより ばけーしょん』 宮内ひかげが、どこまでも上滑りして、面白くもないオチ担当みたいな役回りを続けてきたことが、しかし最後に生きる。 ちぐはぐなまま旅行が終わってしまう悲しさではなくて、やっぱり楽しかったんだと思う。

マジック・キャッスル

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』 まず何より、三階建てで横にやたら長いモーテルの建物の存在感。子供の足で端から端まで走るところを長回しで追うことで、余計にその長さは強調される。 この建物に架かる虹の映えること。 * モーテルの支配人のボビ…

望み捨てるな リズ

『リズと青い鳥』2回目 2回目を観て、前の感想の訂正というか補足というか。 * 黄前久美子と高坂麗奈の掛け合いのシーンの前に、水道でマウスピースを洗っているところが瞬間映る。この画の挿入は、よっしゃ不甲斐ない先輩に一発聴かせてやろう、という意…

out of joint

『リズと青い鳥』 黄前久美子と高坂麗奈が、それぞれ自分の楽器で戯れに、フルートとオーボエのパートの掛け合いに打ち興じる、いつもの校舎陰。噛み合わない傘木希美と鎧塚みぞれを尻目にも見ないで、さすが自分たちにしか興味がない二人、それでこそ、と、…

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『魔法のプリンセス ミンキーモモ 夢の中の輪舞』 以下は、2011年春に観たときの感想です。例によって、まとまりきらないで下書きのまま放置していたものを、諦めて公開するものです。 * 大人になりたい心をその魔法の源とするモモに対して、子供のままでい…

さくらニュータウンではトキドキクジラが空をとぶ

『映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』 アニメ世界と実写世界(毛穴世界)との間を行き来させようという発想の面白さを、損なうことなく一作に纏め上げられていると感じた。『妖怪ウォッチ』の映画として満点の出来と言ってよい…