「最悪の 生き地獄さ!」

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新元号かっこいい、SFみたい、などの受け止めの数々に気が塞ぐ。 いくら意味を取り繕ったところで、命令じゃないか、和せしむじゃないか、という指摘は、尤もなことだと半分は思う。 より本質的には、政治のあるべき姿から自然の有様へと、言葉の表す対象を…

地獄に仏の他人

『えいがのおそ松さん』 童貞。クソニート。そう言って自らを貶めることにとっぷり馴染んだ六つ子たち。ギャグ漫画の世界とは、いわば閉じた世界だ。自らに飽いてよしとする世界だ。 そんな六つ子たちにも、そのあり方に思い悩んでいた時期があった。 * 高…

叶わぬ非望

『PSYCHO-PASS Sinners of the System』Case.3「恩讐の彼方に__」 敵討ちのため、戦う術を狡噛に付いて学ぶテンジンは、父の遺品の中から見つけていた日本語の本の読み方も同時に教わることになる。その本が『恩讐の彼方に』(菊池寛)だった。 短編ながら…

モンストル・シャルマン

『メアリーの総て』 パーシーはメアリーのお腹の子を女の子だと決め込んでいたが(そして実際そうだったが)、『フランケンシュタイン』執筆中のメアリーは、自分が生み出しつつあるものが何であるのか、はっきりとは分かっていなかっただろう。生み出すこと…

夜歩く

『ラブライブ!サンシャイン!!(TVアニメ2期)』#8「HAKODATE」 夜おそく、理亞の家を一人訪ねるルビィ。話があるからといってルビィは理亞を外へ連れ出す。 慣れないはずの函館の街を、先導して歩くルビィ。理亞は行き先が分からない。理亞には見えない…

魔法が使えない子は

『映画しまじろう まほうのしまのだいぼうけん』 ここ一番の大事なときに、しまじろうを応援するのにステッキの力を使わないのは、おなじ小道具を用いるにしても、プリキュア映画とは一線を画するところだ。ステッキを媒介して目に見える力に変換しなくとも…

「ユメノトビラ、ずっと探し続けていた……」

『ラブライブ!サンシャイン!!』#2「転校生をつかまえろ!」 高海千歌が桜内梨子に、今の「ユメノトビラ」だよね、梨子ちゃん歌ってたよねと畳み掛け、答えに窮する梨子を待たず、「ユメノトビラ、ずっと探し続けていた……」と「ユメノトビラ」の詞を言うと…

毎日の葬送

ASKA「月が近づけば少しはましだろう」 ASKAの話をもう少し。 www.youtube.com 僕の中を 通り過ぎ行く人 ほんの一瞬の人 (ASKA「月が近づけば少しはましだろう」) はじめ私はこの「人」、僕の中を通り過ぎ行くほんの一瞬の人とは、1番に出てくるような言…

いつか涸れることない涙

「cry」 かつてASKAが黒田有紀に提供した「cry」。それをセルフカヴァーしたものを自選のベストアルバムに収録した。のみならず、娘である宮崎薫にも歌うようリクエストし、カヴァーが実現することになったという。 Cry|BLOG|ASKA Official Web Site 「Fel…

都築杢之進の消失

『斬、』 人を斬ることが出来ない、女を抱くことが出来ない、江戸への出立の日に熱を出して倒れる。どこまでも手前に留まる、留まってしまう者としての杢之進。 であればこそ、市助たちの敵討ちに立ち上がろうとしないことを罵るゆうの声は、杢之進の鼓膜を…

「あのね、物にはみーんな魂があるって知ってる?」

『かみさまみならい ヒミツのここたま』#138「ここたま界を救え!」 ここたまハウスの新しい飾り作りがうまくいかなくて、リビングのソファーにうつ伏せになるこころ。「どうして私ってばこんなに不器用なんだろう」 そんなこころにお母さんが声を掛ける。 …

ダダ100年、はいから100年

第1回ダダの夕べにおいて、「ダダは僕らの強烈さだ」と叫ばれたのが1916年(「ムッシュー・アンチピリンの宣言」)。「ダダは何も意味しない」という有名なフレーズを含む「ダダ宣言1918」はもちろん1918年。これらから数えて、およそ100年が経過したことに…

消えた年金

『無責任艦長タイラー』のアニメがなかったなら、あの頃とっくに死んでしまっていただろうというのは、およそ間違いないことだ。毎週月曜の30分間だけが生きている意味のすべてだった時代。 今その私が長らえて、辻谷耕史さんの訃報に曝されている。「いよっ…

峰子ちゃんはパン2○見え!

映画『若おかみは小学生!』 おっこだけにウリ坊たちが見えること。 おっこがたびたび、両親をまだ生きているもののように見ること。 死んだ人はどこへ行くのか。私たちの心のうちに、というのは一つの考え方だろうが、それとはまた別の事態を、この映画は示…

ノーブラはいつも稀有なものなのです!

『メジャーセカンド』#23「運命の一打」 弟にミットで胸を叩かれて「てか、そこどつくな!」と言う道塁。同じ声の人が別のアニメではノーブラおっぱいをもみもみしてくださいと言っていたことと考え合わせると、道塁はノーブラでないことが分かる。

「何もない」がない

『劇場版 のんのんびより ばけーしょん』 宮内ひかげが、どこまでも上滑りして、面白くもないオチ担当みたいな役回りを続けてきたことが、しかし最後に生きる。 ちぐはぐなまま旅行が終わってしまう悲しさではなくて、やっぱり楽しかったんだと思う。

マジック・キャッスル

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』 まず何より、三階建てで横にやたら長いモーテルの建物の存在感。子供の足で端から端まで走るところを長回しで追うことで、余計にその長さは強調される。 この建物に架かる虹の映えること。 * モーテルの支配人のボビ…

望み捨てるな リズ

『リズと青い鳥』2回目 2回目を観て、前の感想の訂正というか補足というか。 * 黄前久美子と高坂麗奈の掛け合いのシーンの前に、水道でマウスピースを洗っているところが瞬間映る。この画の挿入は、よっしゃ不甲斐ない先輩に一発聴かせてやろう、という意…

out of joint

『リズと青い鳥』 黄前久美子と高坂麗奈が、それぞれ自分の楽器で戯れに、フルートとオーボエのパートの掛け合いに打ち興じる、いつもの校舎陰。噛み合わない傘木希美と鎧塚みぞれを尻目にも見ないで、さすが自分たちにしか興味がない二人、それでこそ、と、…

おっこ若おかみなのよ

『若おかみは小学生!』#1「なんでわたしが若おかみ!?」 両親を事故で亡くしたおっこ(織子)は、街を離れ、温泉旅館を切り盛りする祖母のもと、母が少女時代を過ごした部屋で暮らすことになる。 その部屋が、空の机とカラーボックスがあるきり、母の名残…

兜率の天の酒

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天上のI.W.ハーパー ハーパーを生まれて初めて飲んだ 強いお酒だ笑 あれをバカスカ飲むなんて気がしれない笑 (追悼ライブを終えた気持ち|有坂愛海公式BLOG『ありのまま有坂様』) 言うことはない。胸に迫る。私の胸に迫るかなんてどうだっていいことだけど…

零下堂キアン

『平成細雪』 平成蒔岡四姉妹の没落、ある一時代の終焉を、完膚無きまでに決定づける象徴としての阪神淡路大震災。しかしそれが起こるのは、なお一ヶ月先のことで。ドラマはあくまで、次なる時代を待たせたままに、栄華の残香のうちに終わる。 思ってみれば…

人間到る処

『ご注文はうさぎですか?』『ご注文はうさぎですか??』 映画公開に合わせて、この一週間ほど『ご注文はうさぎですか?』『ご注文はうさぎですか??』を見ていた。 木組みの街にココアが持ち込んだお姉ちゃん概念が、徐々に伝染し、定着していく。そこが私に…

じーく菜

『Fate/Apocrypha』#15まで 何者かでありすぎるサーヴァントたちが、何者でもなかったはずのホムンクルスに、託したり、構ったり、してしまう。あるいは魔力の塊である聖杯に対して、あやうい器であり、それゆえに可能性であるようなホムンクルス。 ジーク…

「がんばっぺー!」

大好き東北アニメ『想いのかけら』 女川中バスケ部のアニメの放送に迫られて、録画したきりになっていた『想いのかけら』を慌てて見た。 仮設住宅での父娘二人暮らしのディテールの説得力。一方で、地震が、とか、津波が、という直接的な言葉は敢えて使われ…

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『魔法のプリンセス ミンキーモモ 夢の中の輪舞』 以下は、2011年春に観たときの感想です。例によって、まとまりきらないで下書きのまま放置していたものを、諦めて公開するものです。 * 大人になりたい心をその魔法の源とするモモに対して、子供のままでい…

わたしミント

今村夏子『こちらあみ子』(ちくま文庫) 愚直だ、一途だ、という言葉であみ子を賛美する向きもあるようだが、こういうのは物心が付いていないと言い表すべきものだと思う。だからまた、あみ子に憧れるというのも筋違いだ。ただ各自の過去を見つめさえすれば…

「誰も何かができる」

『キャプテン』#12まで BS12で『キャプテン』と『美味しんぼ』を見ることが週のうちの最大の楽しみになっているこの頃。『キャプテン』の放送は、谷口キャプテン時代の終わりまでやってきた。 丸井の存在のありがたさをつくづく思う。 * たとえば、#6「…

強がりではない強さ

『カードファイト!! ヴァンガードG NEXT』#7-8 ミゲル「広いねー、世界は」 トコハ「そうだね」 ミゲル「この広い世界に僕たちは飛び出した。輝く未来を求めて」 (#7「開花する私の未来」) 毎日が楽しい、広い世界に出たいという夢が叶って充実してる…

さくらニュータウンではトキドキクジラが空をとぶ

『映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』 アニメ世界と実写世界(毛穴世界)との間を行き来させようという発想の面白さを、損なうことなく一作に纏め上げられていると感じた。『妖怪ウォッチ』の映画として満点の出来と言ってよい…