「お名前って、生まれたときに決まってるんじゃないの?」

『劇場版 selector destructed WIXOSS

 蒼井晶を心の中で応援上映会のつもりで観に行ったら、映画自体は、せれくぎゅー ですとらくぎゅっと うぃくぎゅす、といった様相であった。
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 名乗りあう前の知らない二人が、どういう経緯でか出会い、おいしいアイスの店へ連れ立つ。導入の場面は、幼児らしい、名前以前の人の繋がりの真実を、その通り描けていると思えた。ときに忘却している、名前に覆われた記憶の向こうを見せられたようで。
 名前ということで言えば、蒼井晶が「あきらっきー」「あきらぶりー」などと名への固執が尋常でないことにも、この映画を観てひとつ納得した。
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 街のビル群は、映画ではそうと明言されないけれど、テトリスに喩えられることから、セレクターバトルの歪さと終わりのなさを象徴しており、そのため、るう子とたまの再会の場面は、青空だけを背景にできる屋上に持ってくる必要があった。のだろうと思う。
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「羽を寄せ合う小鳥のように……」みたいなナレーションのところで映像でも羽を寄せ合う小鳥を見せられたときには、ちょっともにょもにょした。『シベリア超特急』のボロ雑巾を思い出すというか。