「誰も何かができる」

『キャプテン』#12まで

 BS12で『キャプテン』と『美味しんぼ』を見ることが週のうちの最大の楽しみになっているこの頃。『キャプテン』の放送は、谷口キャプテン時代の終わりまでやってきた。
 丸井の存在のありがたさをつくづく思う。
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 たとえば、#6「ピンチ!墨谷ナイン」。
 青葉学院との決勝戦で窮地に立たされた墨谷ナインは、マウンドの松下の周りに集まる。控え選手の丸井は、じっとしていられずタイムを告げてベンチから駆けつけるが、ナインの重い空気に掛ける言葉がない。そこで、苦し紛れに番組の主題歌を朗々と歌えば、一人また一人と声を重ねて、思わぬ大合唱となる。
 ナインの気持ちが吹っ切れる、そのきっかけを丸井が作る。こんな主題歌の使い方があったかと、今見てもなかなかに洒落ている。
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 また、#12「新キャプテンは誰に?」。
 いつもの神社で練習をしていない谷口を咎める丸井。谷口は、先の試合で骨折した指が野球選手としてはもう使い物にならないことを告白する。俺はもう駄目なんだ、そう弱気を見せる谷口に、丸井の叱咤が飛ぶ。

丸井「なんでえなんでえ、キャプテンらしくもない。右手が駄目なら左手があるじゃないすか! 俺だって、何度野球やめようと思ったかしれないすよ。で、でも、一生懸命努力すればやれるんだって、教えてくれたのはキャプテンじゃないすか! そ、そのキャプテンが弱音なんか吐いちまって……」
(#12「新キャプテンは誰に?」)

 丸井の言葉がうれしくて、谷口は丸井を神社へ誘う。「一緒に、練習を付き合ってくれないか」
 虫すだく夜の神社。投球練習を始める二人。谷口が左手で投げたボールは、てんで丸井に届かない。丸井は涙を止めかねる。しかし谷口は、晴れやかな顔で、一つの決断を告げる。

谷口「泣くな、丸井。野球部を頼むぞ、次期キャプテンとしてな!」
丸井「えっ?!」
谷口「俺にやる気を起こさせてくれた、その気持ちでみんなを引っ張っていってくれ!」
(同)

 思うに、神社へ向かう道すがらの、一歩ごとに、この決断は不抜のものとなったに違いなくて。
 この回の冒頭、指を骨折している谷口に、厭うどころか進んでユニフォームを着せてあげる丸井の懐かしさがあって、そうしたい丸井の谷口を慕う気持ちがあって、それがこのラストの場面の美しさにまでつながっている。