望み捨てるな リズ

リズと青い鳥』2回目

 2回目を観て、前の感想の訂正というか補足というか。
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 黄前久美子高坂麗奈の掛け合いのシーンの前に、水道でマウスピースを洗っているところが瞬間映る。この画の挿入は、よっしゃ不甲斐ない先輩に一発聴かせてやろう、という意気込みを表しているようで、あの演奏は残念ながら戯れというばかりではなさそうだ。
 食べ物を床に広げて雑談をしているシーン。希美のグループが、練習もそこそこに朝食だ彼氏だといった他愛ない話に花を咲かせていること自体が、この映画にとって意味を持っているのであり、本人たちにはむろん息抜きだろうが、映画の緊張はここでも持続している。ほっと息をつけるというよりは、食べ物が映る最初のカットで、ようよう息継ぎができるだけだ。
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 ラストシーン。「みぞれのソロを完璧に支える」「私もオーボエ続ける」というやり取りは、いかにもぎこちないが、それは我々の目にぎこちないというに過ぎない。表面的に噛み合って見えなくとも、相手の胸に届けようとして放たれた言葉に、そのほかはない。言葉は受け止められたのだから、そのほかは。
 さらに進んで。「本番、頑張ろう」と二人の声が揃い、ややあって、みぞれが意を決したように「ハッピーアイスクリーム!」と叫ぶ。それに対して希美は、間髪を入れず「なんだのぞみ、アイス食べたいんだ」と返す。
 希美はハッピーアイスクリームの決まりごとを知らなかったわけではないだろう。むしろよく知っていればこそ、もうアイスを奢るつもりで一足飛びにあのように答えたのではないか。
 もっと言えば、声が揃ったあとの、「あっ……」と硬直していたときの希美の内には、ハッピーアイスクリームだ、言おうかどうしようか、という考えがよぎっていたのではないか。もしかしたらみぞれに通じないかも、というためらいもあったろうか。
 そうして、だからこそ、みぞれの叫びに瞬時に答えられた。そんなように思っている。もっともみぞれの方では、ハッピーアイスクリームを先に言うことに必死で、アイスを奢ってもらうことまでは考え及んでいなかったかもしれないが。
 これらのことは例えば、映画中盤で、「図書館の本は又貸しダメなんだけど」という口真似は二度三度と続けてようやく「はいはい」と理解された(あるいは理解されずあしらわれた?)ことと比べてみよ。みぞれってあんまり喋らないから何考えてるか分かんなくてさ、という第三者への告白と比べてはどうだ。
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 ほんとうに私が言いたいのは、新山先生怖すぎる、ということだけだ。