毎日の葬送

ASKA「月が近づけば少しはましだろう」

 ASKAの話をもう少し。

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僕の中を 通り過ぎ行く人

ほんの一瞬の人

ASKA「月が近づけば少しはましだろう」)

 はじめ私はこの「人」、僕の中を通り過ぎ行くほんの一瞬の人とは、1番に出てくるような言葉を向けてくる心無い他者、ひいては他者全般のことを言っているのだと思っていた。

 私たちは、ともすればすぐに、ほんのすれ違っただけの人にも背景がある、人生がある、厚みがある、という発見をしたがる。ところがそのような発見を押し拡げていけば、いずれ息苦しくなる。そうして、いや、一瞬の人だ、と念じたくなる。あんなものは、なんだ一瞬の人じゃないか、と言い捨てたいときというものは確かにある。

 それを言っているのだと思っていた。しかし違った。真逆でさえあった。

 あらためて見ると、2番の詞はこうなっている。

ごまかしながら生きて来たなんて 思わないけど

夢まみれで滑り込むような事ばかりで

 

毎日の自分をどこか 振り分けてた

 

僕の中を 通り過ぎ行く人

ほんの一瞬の人

(同)

 自分のことを言っているのだ。

 消え失せてしまう言葉にそれでも傷つき、拭きとれるはずの言葉はしかし積もり。他者の影はどこまでもまとわりついて振り払えない。かたや思うに任せない日々の自分をこういう仕方でずたずたに葬っている僕。