『えいがのおそ松さん』
童貞。クソニート。そう言って自らを貶めることにとっぷり馴染んだ六つ子たち。ギャグ漫画の世界とは、いわば閉じた世界だ。自らに飽いてよしとする世界だ。
そんな六つ子たちにも、そのあり方に思い悩んでいた時期があった。
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高校卒業を間近に控えた六つ子たちは、先が見えない不安にもがいていた。どこかへ抜け出さなければと焦っていた。
どこへか。それは分からない。しかし、どこからかははっきりしている。ここから、自分からだ。そうであれば、生まれたときから6人セットの六つ子たちには、お互いが、いつまでも抜け出せない自分の鏡写しのようで、とにかく疎ましかった。
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あの頃は頑張っていた。現在の六つ子たちはそう言える。そう言ってしまえる。ともあれ自分たちは、あの時期を通過したのだ。やれやれ、あの頃の俺たちときたら。
しかしまた、べつの眼差しでもって当時の六つ子たちを見つめる目があった――。
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全ての悩める自意識に、あらまほしきは佐藤利奈さん。一等賞。