かいじゅうこどもの海と空

海獣の子供

 琉花が、自分の手を引く海の手の熱さを感じ、守ってあげなくちゃ、と強く思うこと。その直後、台風の中を傘も差さず海と二人歩いていく琉花を、漁港の人がみとめること。

 傘を差さないのは、先ほどの決意がたちまちそういう形で現れたのだと見ることもできるかしれない。つまり、決意したからには、雨なんか気にしてられない、というように。

 しかし、そうであるよりも。自覚的で明瞭な意志を持つ以前から、琉花は外見的にはとっくに海の側にいて、漁港の人の視点はそのことをただ追認したのだと、私には思えた。