「悲劇を抜いた真の生きかたはない」

岡本太郎『迷宮の人生』(アートン

 昨年の終わり頃からダダ・シュルレアリスム関連の本をいくつか読んできた流れで、最近は岡本太郎についてぼつぼつ読んでいる。

 私は生きている瞬間瞬間、迷宮のなかをくぐり抜けている思いだ。
 目の前が突然明るくひろがり、原色がギラギラと輝く。とたんに、真暗に閉ざされてしまう。いったい私は前に向かって歩いているのだろうか。あるいは、後に引きずられ、無限に落下しているのではないか。私の目前、そして全身をとりまいた世界がぐるぐる回っている。うれしいような、そして言いようのない苦しさ。
 自分は世界に向かってひらいている。と同時に、闇の中で血だらけだ。

(p.4)

 冒頭から息の詰まりそうな文章に出合って本を閉じ、呼吸を確かめる。

 表紙を見れば、この文章をそのまま具現するように、深い血の色の闇のなかに太郎の顔が浮かびあがっている。あるいは沈みかかっている。

 あるいは、張り付いている。闇に、太郎が、太郎に、闇が。

 呼吸をあきらめ読み進むよりない。