それが、愛でしょう

ヴァイオレット・エヴァーガーデン

 戦争とこれほど近くありながら、手紙の中にはきれいな愛しかない。いさかいや、絶離を告げる手紙は、この世界には無いのだろうか。そういう仕事はヴァイオレットのいる部署・会社とは違うところで受け持っている? それとも、戦争と近ければこそ?

 #11「「もう、誰も死なせたくない」」では、もう死ぬしかないような戦場からの手紙をヴァイオレットは代筆する。田舎に残してきた両親と幼馴染みに、きれいな愛を届ける。受け取った側は涙を流して感謝する。

 しかし。田舎にはまるでいい思い出がなく、最期の恨み言を手紙にして送りつける兵士の話を、私なら考えてしまう。田舎の人たちは複雑な思いでそれを受け取る。そうしてヴァイオレットに感謝するかもしれない……。

 届かなくていい手紙なんてない。そう言うけれど、醜悪で目を背けたくなるような手紙は、そもそも作中から排除されている。そういうものに対しても、届かなくていいなんてことはないと、ヴァイオレットは言えるのか。というところまでを見せてほしかった。せめてその可能性を。