「僕は最う一層、その上を、物語、そのものになったんだ。」

佐藤友哉『灰色のダイエットコカコーラ』(講談社

 すべてが主人公を応援し支え後押ししてくれているね。そうして主人公は人間になれたのだね。あはは。サクラダファミリアのくだりが素晴らしい。
 これを読むと『1000の小説と〜』はずいぶん分かりやすく書かれていたなあって思う。一般層向けに歩み寄った結果なのかどうか。気のせいかどうか。

泉鏡花作『夜叉ヶ池・天守物語』(岩波文庫

 結婚式に出席する、待ち時間をつぶすために読んだ。「夜叉ヶ池」は、蟹や鯉や鯰の精が出てくると『瀬戸の花嫁』のことが思い出された。「天守物語」は、『怪~ayakashi~』の1エピソードの原作に採られていたように思うが、アニメはどんなだったかもう覚えてない。天守五重と地上人間界との垂直構造が妙味。
 澁澤龍彦が解説で、「夜叉ヶ池」「天守物語」は傑作で「深沙大王」「海神別荘」はあまり出来がよくない、と書いてて、「深沙大王」は未読だけれど「海神別荘」面白いのになあって思った。作劇上の巧拙でいえばそのとおりかもしれない。