大気圏脱出前のロケット

穂史賀雅也暗闇にヤギを探して』(全3巻/MF文庫J

 一人でいるってこういう時間を過ごすことなんだな、とあたしは思った。
(v.3, p.18)

 3巻の風子主観の描写は秀逸。一人の時間というものについてその身をもって知っていた筈なのに、求めた以上のものが失われたとき、何かの糸が切れたように一人でいることを選んでしまう、その機微が。とまれ風子には幸あれ。
 3巻は、ほかにも例えば白旗のガジェットとかいろいろ見所があって、良いと思いました。逆に言えば2巻まではいまいち。
 1巻、2巻と半ば唐突な擱筆のしかたをしていて、これは続巻が予定されているからのことなのかと思っていたら、最終巻も同じようなもので、この作者はエピローグ的な書き足しを嫌う人なのだと知れて、その点は好感します。