奇跡体験!マシュウ・カスバート

赤毛のアン』#1「マシュウ・カスバート驚く」

 人嫌い、女嫌いを貫いて、六十まで歳を重ねたマシュウのもとへ、そのご褒美にAnneのアンを使わしてくださるなんて、神様も粋なことをなさる。(天に向かって)私も期待してますよ!

アン「うわあカスバートさん……さっき通ったあの白いところ、何ていうの?」
マシュウ「そうさのう。リンゴ並木のことを言ってるのかな。あれはちょっときれいなところだが」
アン「きれい? まあ、きれいじゃぴったりしないわ。美しいでも駄目ね。どちらも言い足りないわ。ああー、素晴らしかったわあ。(……)」
(中略)
アン「(……)でもあんな素晴らしいところをただのリンゴ並木だなんて。(……)」
(#1「マシュウ・カスバート驚く」)

 こう言ってアンは、このリンゴ並木にたちまち「よろこびの白い道」と名付けます。このことを踏まえて、遡って以下の箇所。

マシュウ「いや好きなだけ喋っていいよ。わしゃ構わんから」
アン「わーあ嬉しい。きっとあたしとおじさん馬が合うんだわ。(……)」
(同)

 馬が合うではぴったりしない、言い足りない何かを、マシュウはこのとき感じていたのではないでしょうか。人嫌いの自分が、この赤毛の子ののべつ話すのを聞いていて苦もなく、むしろ快い。不思議な感覚の只中にあって、この場では適切な名前を付けることはしませんが、マシュウはマシュウの早さでもって、言葉を見つけていくだろうと思えます。