「癒し系」は終わった。これからは「おやつ系」だ!!

小桜エツ子『みなまでゆーな』

 収録曲のタイトルを眺めただけでも、「もしものときはそんなに来ない」なんて、くすっと笑ってしまいます。ほんとだな、そんなに来ないな、って。
 *
 ストレートな歌声が、節回しに沿うように捏ねくり回されていく、その快楽が、歌手としての小桜エツ子の魅力だろうと思います。例えば「PARUPARO」は、南国調のゆったりした楽曲でありながら、所々にべらんめえ調のような歌唱が、節回しの要求するままに現れて、楽しい。
 *
「大ちゃんの男」は、東京に行ってしまった同級生の大ちゃん(大五郎)と久しぶりに再会したら、大ちゃんは和服姿で「わたしよりもずっときれいな女」になっていた、と、やや変化球じみた、ドラマチックな始まり方をします。そして二番に入ると、タイトルにある「大ちゃんの男」が登場します。大ちゃんの連れている男を観察するわたしは、「なんてステキなひと」、「わたしの彼氏よりも絶対優しそうだわ」と感じます。
 ここで終われば、ただのやっかみです。使えないわたしの彼氏の、愚痴です。ところが、もうひとつ、わたしは気付きます。

大ちゃんの 男
大ちゃんの (男よ)
わたしの 彼氏よりも
なんだか 幸せそうね
小桜エツ子「大ちゃんの男」)

 こう気付くことは、わたしの方だって彼氏を幸せにできていないんじゃないか、という反省の種となり得ます。そうしてふっと力みが解けます。
 これぞ枯堂夏子の真骨頂ともいうべき、見事な詩業です。
 *
 今日手に入れたので、2002年のアルバムの話です。