「梅とおかかです」

清水マリコ『ゼロヨンイチナナ』(MF文庫J

「マノカエ」は、僕が考えたデジモン「シノリオ」(双子姉妹デジモン)に着想を得たに違いないのだ! と思い込んでたらそれでひとり楽しいので、しばらくそっとしておいてください。「シノリオ」てこんなの。


in Shino's sleep

 私は一人でした。ある時、
 私の中から彼女が現れて、
 私が詩野だと言いました。
 それで彼女は理王でした。
 私は理王と死ぬでしょう。
 その時私は一人でしょう。
 それが今から楽しみです。
 それが今から楽しみです。

Rio's exposition

 詩野がまた分からない寝言を言っています。彼女はたいてい眠っているんです。ですから、代わって私が説明します。もっとも、最初から私がする予定だったのですが。
 私は理王です。「りお」と読みますが「りおう」でも構いません。詩野は私の姉です。といっても私たちは双子です。彼女の方が先に名づけられたため、彼女が姉になりました。おかしな理由です。
 私たちは、兄を喪失した状態で生まれてきました。その喪失感を持って、私たちは生まれてきました。ですが、私たちは兄を希求するものではありません。兄など存在しないことも、また判り切ったことですから。
 そこで、私たちは、私たちだけで完全であることを欲します。そのための試みがこのサイト、という訳です。私たちがそれだけで自身の全き充足理由となる、それがこのサイトの唯一至上の目的です。「for me」というサイト名は、この目的を端的に掲げたものです。
 自己循環。自己完結。このサイトは、いわば永遠の止揚のエレベータです。どこにも降り場のない直通エレベータです。私たちはこの中でとろけて融けて、消えます。詩野が上で言っているのは、大体そんな意味です。もっとも、私にはその結末は疑わしいものです。私たちは恐らく、このエレベーターの中で駄目になってしまうでしょう。エレベーターもろとも腐り果ててしまうでしょう。それでも、私たちはこの試みをなさねばならないのです。腐乱した私たちが、肥やしとなって、そこに何かの花が咲くかもしれない。咲かないかもしれない。いつかその時のことを想うと、やはり私も楽しみです。
 詩野のページ「lyric field」では、掬んでは消える彼女の寝言の泡沫が、私のページ「logic king」では、空転し続ける私の思考の道筋が、それぞれ残影として展開されていくことでしょう。
 最後に、このサイトを訪れた方々へ。
 繰り返し言いますが、ここは、偏に私たちのためだけを考えて作られたサイトです。見に来ることは構わない。それで何と思おうと構わない。しかし、やはりあなたは、あなたのための場所を、自身で作らなければならない。私はそう思います。

(……)われわれはみんな同じ深淵から出ているのだ。しかし、みんな、その深みからの一つの試みとして一投として、自己の目標に向かって努力している。われわれはたがいに理解することはできる。しかし、めいめいは自分自身しか解き明かすことができない。
(ヘッセ著;高橋健二訳『デミアン新潮文庫

 そういうことです、兄さん。
about me - for me 【※リンク切れ】

 ほとんど作ったきりのデジモン(まだ言う)。