梨木香歩『西の魔女が死んだ』(新潮文庫)
こういう、回想のくせに一人称じゃない小説って、嫌いさ。そうして誰ともつかない視点からの現在がひょっと出しゃばって、
ずっとずっと後になって、まいは、おばあちゃんが、法律的にも本当にその土地をまいのものにしてくれていたことを知った。そして結局そのことが、おばあちゃんの山全体を開発の波から救うことにもなったのだった。
(p.94)
そして、二年後、まいにも分かるときがくるのだった。
(p.102)
なんて言われた日には、「あ、そう」としか応えようがないではないか。そんな気持ちで読んでいると、おばあちゃんの「アイ、ノウ」も、「あ、そう」と木霊してこないか? 木霊するのである。