われらの同時代人

吉本隆明『詩とはなにか』(詩の森文庫)

 吉本隆明がまたいいことを言っています。40年以上前の話ながら。「現代詩のむつかしさ」中、谷川雁の詩「商人」を読み解く件などは殊に痛快。
 他には例えば、「庭つ鳥」という言葉と「鶏」という言葉の間に(或いは「たらちねの」という言葉と「母」という言葉の間に、「いさらなみ」という言葉と「霧」という言葉の間に、などなど)何かしらの詩情を喚起する無限の空間があって、今ではわからなくなってしまったこの空間を現代詩は現代の仕方で再現するのではないか、という「詩について」での提起は非常に示唆に富んでいると思える。そしてこのことが正しいかどうかは勿論問題ではない。