「メロメロなメロディ」

中川かのん『Birth』

 発売日にどこのネット通販サイトを見ても初回限定版が売り切れになっていて慌てたものの、同日中に駄目元でAmazonに発注を掛けておいたらあっさり再入荷され入手することができた。
 結論から言うと、パケ写のかのんちゃんがかわいい。
 インスト曲による導入、「はじめまして」の挨拶からアイドル・中川かのんの自己紹介的楽曲「LOVE KANON」への流れ、そうして「みんなを撃っちゃうぞ」が「あなたのハート狙い撃ちよ」にすり替ったときには、以降の楽曲で歌われるところの一少女・中川かのんのプライベートな恋愛空間に引きこまれる準備が出来上がっているという、完璧な構成。ただし、リピート再生をした場合に、10曲目の晴れがましさから、頼りなさとしかし確かな予感を連れた1曲目冒頭への急激な移行によって心臓に掛かる負担が尋常でないので、1周ずつ間を置きながら聴くことをおすすめする。
 やはり「ハッピークレセント」である。「いつの日にか」と勢い込んだかと思えば「鈍感すぎなロミオさん」と歌うときには心の中で「ロミオさん」なんて呼んじゃってることの照れがあらわれる。また、「元気出してよ」「私がいるよ」と実際に話された二つの「〜よ」にたちまち続けて「告白だよ」と内語の「〜よ」が、逸る心そのままに歌われ、その思いが伝わらなかったと感じて少し怒って「鈍感すぎよ」と来る。しかしそれでも「ロミオさん」なんである。詞の良さもさることながら、この表現力には脱帽する。
 「クレセント」って、いつも気にして見てしまう想い人の横顔のことだろうか。教室での席の配置や微妙な距離感など眼に浮かぶよう。
 他の曲についてはあえて書くことはしないけれど、名盤と言ってよい。「ウラハラブ」ってアイドルだけに許された言葉だ。