「うまいからえらい!」

内田樹『先生はえらい』(ちくまプリマー新書

 最初は退屈な進行だと思ってたけど、終盤一気に面白くなった。
 恋愛になぞらえて語られるけど、結局師弟関係は恋愛と何が違うことになるんだろうかそこがわからない。恋愛の一形態が師弟関係ということでよいのか。
 誤解の師弟関係というので、子路孔子中島敦「弟子」)を連想したり。あれは互いに相手のことをてんで分かっちゃいないんだけど、それでも二人はもっとも深い結びつきの師弟であるという話で。この本に言わせれば、てんで分かっちゃいないが故に、ということになるのだろう。うろ覚えなんであんまり深くは突っ込まないで。
 あとはイエスと弟子達とかにも触れないとなんだけど、(つづく)

吉本隆明『読書の方法』(光文社)

 不覚にも一番後ろに収録されている荒俣宏との対談(「恋愛小説の新しい効用」)が面白かった。
『昆虫記』『新約聖書』『資本論』が多大な影響を与えたことはまあそうなんだけど、あとは、やっぱ太宰好きだね。なかでも、

太宰治「駆込み訴え」(『太宰治全集 3』(ちくま文庫)所収)

については何度か言及があって、読めばなるほど面白い。ユダの裏切りの場面を太宰流に描いて見せていて、その訴え振りがたまらない。次々に言葉を継いでいかないではいられない、そのさまが哀しいばかりに滑稽でね。
(つづき)ユダの裏切りはあの人をとても愛していることから起こったのだという。やはり師弟関係⊂恋愛関係なのだと思う。