モクバのお姫様なんて信じてるわけじゃない

中野翠編『尾崎翠集成(上)』(ちくま文庫

 編者の中野翠は「小野町子もの」と呼んでいるところの、そして私が「分裂もの」と呼ぶところの一連の作品群が良い。「第七官界彷徨」は舞台の家こそが分裂病院ではないかと疑わずにおれない。「地下室アントンの一夜」は最後に用意された読者へのご褒美のよう。

 間ちがいもなく、季節はずれ、木犀の花さく一夜、一罎のおたまじゃくしは、僕の心臓に変化を与えてしまいました。
(p.176)

 私もこんな告白をしてみたい。そして分裂達が出会うべくして出会う地下室アントン! 世界から切り取られたような空間。一詩人の心の中に築かれたこの部屋は、一切の煩わしい規定を受けない。彼らの会話のみが響いて、紫煙はたゆたい、不思議と穏やかな幸せが充溢する。

Franz Kafka著;吉田仙太郎編訳『夢・アフォリズム・詩』(平凡社ライブラリー

 を読みながら眠りにつくのがここ数日の幸か不幸か。

ローゼンメイデン トロイメント

 ぼちぼちと見始めた。「誰も知らない七番目、それが薔薇水晶」(#1)と聞いて「誰も知らないレベル9」(『ありす in Cyberland』)なんてフレーズを思い出すのは、まあ「Alice」繋がりってことで。