イチャパラ

みすず書房「理想の教室」シリーズ

 取りあげられてる作品が割とツボで気になっていたので、ちょっとずつ手を付けはじめた。まず中原中也、「銀河鉄道の夜」、「断食芸人」、「カンディード」の4巻。

  • 佐々木幹郎中原中也 悲しみからはじまる』……推敲過程や自筆原稿からの読解を読んでいると角川書店版新編全集が欲しくなる。著者の佐々木幹郎っていうと「詩のボクシング」でいつも屋台で楽しそうに審査結果に反映されないジャッジをしてるのしか知らなかったけど、ちゃんとした仕事もしてるんだなと。
  • 千葉一幹『「銀河鉄道の夜」 しあわせさがし』……「言葉が規則である限り、別のところでも繰り返されうるものであることを前提とし」、したがって言葉を用いる限り「第三者の存在が想定されてしま」い、「ふたりだけの世界に閉じこもることは許され」(以上全てp.103)ないのだとしたら、言葉で通じ合ったかどうかということによらず、一緒にいる、一緒のときを過ごす(ひいてはイチャイチャする)ことこそが我々の不壊なる親密さを保証するのかしら、などと読みながら思った。
  • 三原弟平『カフカ「断食芸人」 <わたし>のこと』……「断食芸人」を扱っていたはずが、しまいには葛西善蔵の話にすり替わっている罠。「かえすがえすも惜しい」と言われても。
  • 水林章『「カンディード」 <戦争>を前にした青年』……本書で取り上げたごく短いテキスト中に作品全体が集約され、入れ子構造的に表現されているという話。パングロスから教わったことを次々と忘れていく(捨て去っていく)、変則的な教養小説であるという話。

 これとは別に、ちくま新書久々の哲学者入門書であるところの小林道夫デカルト入門』とか、清水マリコ『侵略する少女と嘘の庭』(MF文庫J)なども読んだ。何が侵略なのかよく分からなかったけど、ヒロインがアニメの敵役少女に擬せられていることからきたタイトルだろうか。