「すまいとばし思うて?」

太宰治全集 4』(ちくま文庫

 読み終わった。この巻でまず注目すべきは、「愛と美について」の姉妹編「ろまん燈籠」と初の書き下ろし長編「新ハムレット」、あとは「千代女」「風の便り」「東京八景」というところだろうか。しかし全体的に低調のような。
「新ハムレット」は沙翁の「ハムレット」を題材にしていることがまるで嘘のようにすっかり太宰作品に仕上がっているから不思議。ハムレットとともにあってクロージアスに閉口している太宰の姿がありありと目に浮かぶのだが、解題によれば発表当時はそのような見られ方がされなかったらしい。「クロージアスに作者が同情している」と正宗白鳥は解したとか。ありえない。
「風の便り」は、次に続く2作(「誰」「恥」)まで含めて読むと、それらが聖書の引用で始まるところまで含めて読むと味わいが2割増。