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中村九郎『黒白キューピッド』(集英社スーパーダッシュ文庫

 いくつも書店を巡って、やっと見つけた。
 視点や時制の不統一とか、時間的飛躍とか、明らかに破格しまくってるのにそれで成立してるから不思議。ラストまで何かがまっすぐと通じていると思えるから不思議。会話だって全然噛み合ってない。*1
 あるいは作者の思いの足があまり速いので、はるか遠くに到達してしまっているので、ただ足跡として痕跡としての言葉が我々の前に残ったというか。説明の欠落、ことに倒置的説明の拒否が恐らくはそう感じさせる原因かと。倒置法なんかで前の文にかかずらっている暇はないのです。実際は倒置法使ってるかもしれないけど感触としてはそんな感じ。
 キャラについて言えば、メイジはウザくてイタくて、でもそんな少女の罠に少年はまんまと掛かってしまうのだなあとか、割とどうでもいいことに「ぎゃー」とか言って驚いたり感心したりする加藤ってば、とか。
 手放しで絶賛するにやぶさかではない。しかしオススメもできない。なんだろうこれ。

*1:「会話が噛み合ってない」っていうか、相手の言葉を推進力にして、それまで言おうと思っていたことなんかそっちのけで新たな思いつきでどんどん先へ進んでしまうので、むしろ噛み合いすぎているのかも。容易には追いつけない。