「メロス、君は、まっぱだかじゃないか」

野村美月“文学少女”と死にたがりの道化ピエロ』(ファミ通文庫

 自分はこれからも道化の仮面をつけ、世間を欺いてゆくでしょう。
 けれど、そのことが、前より恥ずかしくはないのです。
(p.243)

 本当は太宰治全集を読破してから手を付けようと思っていたのですが、いつになるか分かったものではないので先に読んじゃいました。全ての太宰読みに読んでほしい1冊です。特にp.235からの遠子先輩の説得の場面は、「ああ、ああ、そうだ、そうなんだ!」とこっちまで熱くなってしまいました。「僕も書くよ。レポート千枚、書くよ! 地獄の馬だって、画くよ!」と叫んでしまいました。なんだよ地獄の馬って。
 なんていうのか、太宰の作品を受け止めて、太宰という課題を乗り越えようとしている姿勢が窺えて好ましい。「新シリーズ」とあとがきに書かれているので、続編では何を題材にとるのか楽しみです。「太宰治なんかぼくは嫌いだ」(p.192)と泣かずにいられないほど重傷の心葉くんがどうなってしまうのか、その辺も気になります。