「神は死んで、人々がみな神になった」

読んだ本

 みすず書房の「理想の教室」シリーズから、亀山郁夫『「悪霊」神になりたかった男』、巽孝之『「白鯨」アメリカン・スタディーズ』、荻野アンナラブレーで元気になる』の3冊。『悪霊〜』は『悪霊』中の一節「告白」の読解がスリリングで、いずれ『悪霊』を読んだときにはもう一度読み直してみたいと思えた。『白鯨〜』は副題の通り、『白鯨』を通してアメリカ的なものの展開を捉える試みの書。『ラブレー〜』は対話というか掛け合いの体裁になっていて、馬鹿馬鹿しく楽しく読めた。
 ジェフ・コリンズ;鈴木圭介訳『デリダ』(ちくま学芸文庫)は『サルトル』、『ラカン』に続く「FOR BIGINNERS」シリーズの邦訳3冊目。
 高橋昌一郎『理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性』(講談社現代新書)は、同じ著者の『ゲーデルの哲学』(同)より話を広げて、一般に理性の限界というものについて分かりやすく紹介した1冊。「理性の限界」シンポジウムの模様を描いた、という設定になっていて、登場人物が多数配されているのだけれど、登場人物が発言しているというよりも、発言内容がまずあって、それぞれに適当な発言者を割り当てているという感じ。単なる形式だなあ、と思った。善悪以前に。話を脱線させるだけのために頻繁に登場させられるカント主義者が哀れ。
 ピーター・P・トリフォナス;志渡岡理恵訳『バルトと記号の帝国』(岩波書店)は「ポストモダン・ブックス」シリーズの最終巻。やっと出た。『記号の帝国』を文化史を書くということの可能性の開拓のひとつの実践として捉えてみる、という視点から書かれていたのだと思う。原文が悪いのか翻訳が悪いのか、そしてもちろん私の頭が悪いので「ポストモダン・ブックス」シリーズはどれもこれも読みにくかったという印象ばかり残ってる。
 この余りはいずれ。