「正義が問題なんです」

野村美月“文学少女”と神に臨む作家ロマンシエ』(ファミ通文庫

『狭き門』は私も理解しがたい作品ではあって、しかしその理解しがたさが理解しがたさのままに掬われて損なうことなく、そこにひとつの新たな主題を形成しえているように思った。あるいは同一の主題を。
 文学少女シリーズは本作をもって一応完結ということで、取材された作品がほとんど(『オペラ座の怪人』以外)既読だった幸運にも恵まれて、最後まで楽しく興味深く読むことができた。

カフカ池内紀訳『失踪者』(白水uブックス

 もうずいぶん前に読み終わっていたものの、ここに書いてなかったようなので。

「正義が問題なんです」
(p.41)

「不正が行なわれたんだ、この船の誰もが受けたことのないような不正なんだ。ぼくはちゃんと知っているんだ」
(p.43)

 こういって火夫を庇おうとしたカール・ロスマン君が、アメリカの地に渡って、俗な言葉で乱暴にまとめて言えば「成長」ということをする。そうしてやがて「カールはもはや、こういった言葉には耳を貸すようなことはしない」(p.321)までに至り、名を偽った(p.339)ところで失踪者の一丁あがり。と言ってしまうのは簡単なんだけれど、ご多分に漏れずこの作品も未完なのだから、カフカがどのような結末を意図し求めていたのかは、よくよく考えてみなければならないのだと思う。「この小説は未完ではないだろう。(……)この上なくテーマに即した、もっとも自然な終わり方ではなかろうか」(p.361「『失踪者』の読者のために」)なんて言ってしまうのは本当に簡単だけれど。

漫画

 いつもの作者のものを読んだだけなので略すとして。尾玉なみえこがわみさき黒田硫黄山本ルンルンのあれやこれやです。