「へらへらへら、わたし有名な中国の手品師、チューサン」

天沢退二郎『光車よ、まわれ!』(ピュアフル文庫

 ブッキング復刊版も買っていたものを、今になって文庫版で読んだ。

 考えているうちに、ルミの小さい胸にあつい火のかたまりがうまれてきた。これはすごい、いのちがけの冒険だわ。よーし、がんばらなくっちゃ!
(p.109「ルミの冒険(一)」)

 一郎たちのグループとはあるいは並行的に、あるいは交差的になされるルミの冒険が、作品全体が息の詰まるような閉塞感、暗いトーンに打ち沈んでしまうことからうまく救ってくれているのだと思う。ルミの胸に宿る熱い使命感やルミの恐れの知らなさ等のために。

清水マリコ『赤いくつと悪魔姫』(B's-LOG文庫)

 あまりピンとこなかった。今はMF文庫J作品に掛かっているらしい。

志賀直哉作『小僧の神様 他十篇』(岩波文庫

 今まで「赤西蠣太」と「和解」しか読んだことがなくて、志賀直哉のことは大嫌いなんですが、今回短編集を読んでやはり嫌いでした。作者というものがどこか作品とは離れた安全な場所にいて、作中人物をこねくっている惨酷。あるいは惨酷という大仰な言葉にも届かない児戯。あるいは六大学リーグ戦。

市古貞次校注『新訂 方丈記』(岩波文庫

 半年ほど前に下鴨糺の森をそぞろ歩きして、復元された「方丈」を河合神社で見てきていたので、そのうち読もうと思っていたのを読んだ。

木田元『哲学は人生の役に立つのか』(PHP新書

 ただの半生語り。