「あたし少し、失礼だったわ。ごめんなさい」

あしたへフリーキック

 アミノテツロー(現・アミノテツロ)監督作品を補完する目当てで9月末から見はじめて、途中サボりがちになりながらも約ひと月かけて見おわった。
 経営学校に通っていて頭がよく、もとよりスポーツも万能で、何にでも真剣なのだけど刻苦勉励汗水流すまでもなく何でもこなせてしまう、爽やかでつかみどころがない、それが本作の主人公・伍代隼であり、そんな彼の性格も手伝って、彼の持つ雰囲気に巻き込まれるかたちで、作品全体がおっとりした時間に包まれ、会話の間などちょっと他に類例を見ない独特な作りになっている。それぞれの思いや熱の度合いにちがいがあって、ときに会話がちぐはぐになっても、分かったような分からないようなままでも物事はなんだか進んでく。サッカーアニメだと気負って見はじめると肩透かしを食ったように感じるかも知れなくても、熱血ずくではないティーンの青春模様とでも言おうようなものを巧みに描き出していることはじきにおのずから知れてくる。
 並の人物では隼のペースにはぐらかされたような格好になってしまうところが、アリッサ相手のやりとりでは隼の方がかえってまごつきがちなのが楽しい。また、隼が絡まないところでも、例えばみづほを茶化すバレー仲間たちの気のおけなさなどたいへん楽しい。
 #38「テレフォン」が白眉。内容はサブタイトルのとおり電話をめぐる微妙なる話であり、その出来映えといえば息を飲むほどであり、確かめるまでもなくアミノ監督自ら絵コンテ切ってる回だった。いや万が一があってはいけないので確かめることは確かめたんだけども。このエピソードが踏まえられてこそ、続く#39の電話シーンがまた生きるんだ。香苗さんはこの色気で高校生で信じられないかわいい玉川紗己子(現・玉川砂記子)。
 しかしまあ、何はともあれ、草尾毅天野由梨のメインふたりに始終萌える。