「どうもあひる声だと思ったよ」

プリンセスチュチュ』#1~2

 4月中で月額見放題から外れるという話なので、しばらく放置してたバンダイチャンネルのアカウントで『プリンセスチュチュ』を見はじめたら、冒頭のナレーションからOPまでの流れでちょっと息がつまる。岸田今日子岡崎律子の両名がすでに鬼籍に入ってしまったからというのでなくて、放映当時、存命当時からこんな印象ではあったと思う。この印象が呪縛のように本編にも垂れ込めていて、なのでやすやすとあひる=加藤奈々絵に萌えるわけにいかない状態。
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 作者が死んで、おはなしの中から王子と鴉がとび出してきたという。そのとき、死んだはずの作者が何やらつぶやいたという。
 ふしぎがあたりまえに起こるこの町では、あたりまえのように先生がネコでもあればアリクイがアリクイ美ちゃんでもあって、あひるの正体がただの鳥のあひるだとしてもそのことはただちに彼女の特異性を保証しない。そこへ件の作者が現れるや、彼女もふくめて町のすべてが、彼のおはなしの駒の地平に引き戻されるかに見える。それでもわれわれが彼女を特別視するのは、ただカメラが彼女を追っているという事実のためだといっていい。
 このあたりの事情も、安易な萌えを許さないことのひとつの理のように思われる。
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 あひる少女なんてまったく加藤奈々絵のためにしつらえられたようなキャラクターなのだから、加藤奈々絵そのものの色のようでありながらあひるそのものがしゃべっているようでもあり、いま両者はほとんど一体のようで、あらためて加藤奈々絵だけを取り出して云々することができるのか疑わしいという別の問題もある。たぶんできるんだろうけど。