「フッ…」

大倉らいたセンチメンタルグラフティ〜約束』(角川スニーカー文庫

 読書メーターの著者グラフが、普通にやってると漫画家の名前で埋め尽くされてしまったので、これではいかんと奮起して、最近もっぱら大倉らいた作品ばかり読んでいます。5冊まで読んでグラフの端に名前があがってきたので、まずは目的達成。『センチメンタルグラフティ〜約束』の、優のエピソード(「第七話 幻の転校生」)が一等好きです。
 *
 いわゆる常識からはずれてしまったようなときにも、自分の価値観、感性に正直で、そのために孤独になることを厭わない。孤独を愛する、愛する術を知っている、優はそんな少女だった。
 そんな優の前に、少年はあらわれる。

 優は少しあきれたが、同時に嬉しくなる。少年は星に詳しいわけでもなく、ただたまたま、この場所に登って来たのだ。なぜだかそれが嬉しい。
(p.172)

 その夜は、折しもペルセウス座流星群がひときわ心踊らせる夜で、優は、少年との出会いに運命的なものを感じる。そうして、少年との出会いが嬉しい優は、その心に正直に、星を見るのにとっておきの岬へと少年を連れ出す。少年を自転車の荷台に座らせる優。優の嬉しさをそのままに受けて、二人を乗せた自転車は疾走する。「しっかりつかまっててよ! 思いきり飛ばすからね!」「平気、平気! それより落っこちないでよね!」「ほらっ、振り落とされないようにしっかりつかまってて!」
 初対面の少年に自然とうちとけ、ともにいる時間を重ねるにつけ、優の嬉しさはますます募っていく。そこに、別れが来る。また孤独が来る! 以前の優からは想像もできないうろたえようで、思い出の灯台に向かった優は、そこで少年からのメッセージを見つける。

 優は、いつの間にか、またいつもの冷静で、クールな彼女に戻っていった。嬉しかったのだ。そのメッセージのおかげで、少年の存在が夢や幻ではなく、確かなものだったと思うことができたから。
(p.189)

 嬉しさは二度、優を変えた。優の孤独は、孤独とは別のものになった。
 *
『センチ』を読むとお好み焼きが食べたくなりますが、「通天閣スペシャル」ってアニメだけでしか言わないんですね。今回読みなおしてあらためて知りました。