風邪のたまこ、たまこの風

たまこラブストーリー

 折笠愛「月のTRAGEDY」を想起せずにはいられない。
 さまよいあう彼らの関係は、地球と月とに似ているようで、でも違うのは、彼らには糸電話があり、糸電話の糸が、心に辿りつく道になってくれることだ。
 ボールがお餅に似ている、とたまこは言うが、バトン全体としては、その形状は、張り詰めた糸電話に似ているように思う。意図してのことかどうか。(糸だけに)
 もっちーが突然走りだし河原で叫ぶ。お父さんがお母さんに贈ったプロポーズ曲のカセットテープを、お姉ちゃんはこの頃たびたび好んで聴いているようだ。そういう場面場面の、もっとも近いところに、あんこは居合わせる。バトンじゃないけど、映画のバランスポイントとして、そこにいるよう仕向けられている。よく分からないよ、という顔をした者の存在が必要なのだ。とはいえ、いつかたまこに着せてもらった制服がぴったりの大きさになった将来には、思い当たって、あー、うー、ぐるぐる、となる日もあるだろうか。
「お腹すいたー、早く帰りたいー」というあんこの台詞は、二回観て二回好きだ。