47ハムザイ

Winny

 社会的な問題、警察組織の問題等がさまざま絡み合うように構成されてはいるが、軟弱な私はただ、金子勇という魅力的な人がいたことの記録の映画と思いたい。数々の遺品を映画に登場させること。当時の時代のPC環境や画面表示の再現。さらに遡って、少年・金子勇が見たであろうPC-8001上の星空。彼が育ち、彼もまた眺めたはずの、佐野の空や山並み――。

 役作りのため18キロ体重を増やして撮影に臨んだ東出昌大を見て、金子の姉は「勇ちゃんがいる!」と涙されたという。これ以上の評を私は持たない。

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 金子勇分をもっと得たくて、壇俊光Winny 天才プログラマー金子勇との7年半』(インプレスR&D)を読んだり。

 ある日、私と金子は、アニメのエヴァンゲリオンの話題になった。金子はエヴァンゲリオンが大好きで、2ちゃんねるの某板でも投稿していたらしい。ソフトウェア板よりも熱心な2ちゃんねらーだったと言っていた。

 またある日、金子が、

「壇さんだったら、私の好きなキャラ教えてあげてもいいですよ」と言ってきた。[……]

(pp.102-103)

 好きなアニメの好きなキャラを教えようというのは、弁護人以上、ほとんど親友のような信頼を、金子が壇に対して抱いていたことの、この上ない表れだろう。

 そしてこの秘事は、映画撮影の中で、壇と東出の間でこっそり共有されたそうだ。これもまた、東出になら金子を託してよいという信頼に他なるまい。

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 アスカであってほしい。