頭の中の拵え事

マイマイ新子と千年の魔法

 もう1本見てきたのがこの映画。片渕須直監督の新作が、マクFの陰でひっそり封切られていたのです。
「千年」ってなんなんだろうな、って見ながら考えてました。
 想像の力で千年前の周防の街を駆け回る新子の姿を目の当たりにしたとき、あるいは千年前の女の子の遊んでいたお人形のことを口にする気軽さに触れたとき、「千年」というのはただ時の隔たりではないんだと感じられます。意識するにも遠く形骸化した数字なんかではないのだと感じます。そうして、新子たちの暮らした五十年前の防府をこんなにも鮮やかに生き生きと描き出されてみれば、千年前と新子との関係は、そのまま五十年前と我々とについてもあてはまることなのだと思います。やりよう次第で、私たちは五十年前にも、千年前にも、直截に、繋がることが出来るのだと言えそうです。
 新子が千年の魔法を「頭の中の拵え事」として手放そうとしたとき、これまで新子にaffectされつづけてきた貴伊子に、しかしかえって一つの魔法のようなものが掛かる、このあたりの描写がなんだか不思議です。
 疑いようもなく今年一番の映画ですから、お近くに上映館がある人はきわめて幸運なのですから、ぜひ時間を作って見に行きましょう。ヱヴァもサマーウォーズもはっきり霞みます。
 公開初週の祝日なのにもかかわらず12人しか観客がいなかったので、今頃行けばきっと貸切だと思います。その意味でも泣けます。