「桃太郎だけが日本一なんだぞ」

「惜別」「お伽草子

太宰治全集 7』読み終わり。
「惜別」は、「駆込み訴え」「右大臣実朝」あたりと読み比べてみれば示唆が得られそうな。語られる対象との距離感情によって小説の語りのスタイルも当然異なってくるので、たとえば周さんは好人物として述懐されているけれども、理想や熱望や逡巡や懊悩やいろいろ抱えた、イエスや実朝とはちがって(語り手にとって)当たり前の人間でもあって、そうしてその当たり前の好人物の周さんというものを太宰は見事に描き出していると思う。
お伽草子」はやはり面白い。亀のいじらしさといったらない。