月と狂気と自由恋愛

2月に観た映画(3本)

 アニメじゃない映画のほうがたくさん見てた。3本中だけど。

 板尾創路浅野忠信の、主演の二人の言葉の交わさなさが、異様なようでいながら信頼感に満ちてあたたかく、そのあたたかさがやはり異様で。同一人物とされた二人がひとつの画面に共存する居心地の悪さみたいなものを、観ているこっちは感じようというときに、画面の中の二人は無言のうちにどこまでもおだやかで、それで異様に映るのだと思う。どこか共犯的とでもいうか。
 二人の無言は観客の理解を拒む。その拒絶がクライマックスを際立たせる。落語を題材にしていながら、言語を絶し言語を超えたところで何かを見せようというのは、映画としてひとつの正しい姿勢と感ずる。

 三部作の一。
 みやむーも出てこなければ、半場友恵コレットがえぐえぐ言いながらこぼれた酒を舐めとるTV版第1話の名シーンもなかった。「だーとうとうこぼしちまったぜぇ、全くしつけのなってねえお嬢ちゃんだ」「こらお嬢ちゃん、こぼしたやつをきれいに舐めとりな。さあ!」「早くしねえと、染み込んじまうぜ?」「もったいねえだろうが」「なにぐずぐずしてんだよ!」(以下略)ていう。

 ボーヴォワールの「ヒュッ」とか「シュッ」とかいう歯擦音が館内によく響いて印象的だった。自分を除いて観客が老人三人だけだったのも印象的だった。