「歩を始めてどれくらいになる?」「千年」

古橋秀之冬の巨人』(富士見L文庫

 新しく生まれた巨人の軽快さ、漲るばかりの快活さは、半ば滑稽なようであり、またそれがために神性を感じさせもする。神話の側の出来事を、神話に類するものを、読んだのだという印象を齎す。ミール(巨人/世界)における伝承や信仰が話の根底にあるのはもちろんだが、この若い巨人の描写は、その上に、この印象を決定的なものとしている。