Just Be In Shibuya

東京旅行

 巷間でその存在がまことしやかに囁かれている大型連休とは全く関係なく、4/16〜17の二日間東京に行ってきた。新国立劇場で『ゴドーを待ちながら』を観るのがメインの目的で、せっかくだからそれに合わせて首藤剛志を偲んで渋谷散策もやっちゃおう、というプラン。
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 初日の4/16は渋谷散策。『都立高校独立国』の巻頭に載っている20年前に描かれた渋谷の地図だけを頼りに思いながら、でも基本的には何も見ずぶらぶらと。
 10時前に渋谷駅に着いて、まず駅前のTSUTAYA首藤剛志コーナーがあるという話なので覗いてみたら確かにあった。さすが渋谷と思ったが向かいには今 敏コーナーもあった。
 その後、公園通り→スペイン坂→ペンギン通り→オルガン坂→代々木公園→ファイアー通りと歩きまわって、再び駅前に戻ったところで正午過ぎになったので昼食のために道玄坂へ。目当ては『ようこそようこ』に登場するカレー屋(#27「ようこそカレー行進曲」)のモデルになっているムルギーという店。なんだけど。
 迷った。
 道玄坂の2丁目だということだけは記憶していたけれど詳細な位置を調べずに来ていたので、1丁目を30分ほどさまよい、2丁目に辿り着いてからさらに30分、ようやっと店を発見したときにはもう汗だくのへとへとで本当にこれからカレーを食べるのかというような状態であったものの、店内へ入り席に着くなりお冷を飲み干した私に「今日は暑いからねー」とすぐさま2杯目を注いでくれたのがうれしくて、疲れがいっぺんに吹き飛んだ思いがした。カレーは見た目のインパクトも楽しく味も独特でおいしく。
 ムルギーを出ると今度は名曲喫茶ライオンへ。こちらも『ようこ』に出てくる店なのではあるが(#6「響け!心のバイオリン」)、のみならず、ここで首藤剛志が200字詰め原稿用紙を広げて脚本を書いたこともあるのであり、そこで私はといえば、大音量のクラシック曲に包まれながら首藤剛志ポケットモンスター THE ANIMATION VOL.2 仲間』(スーパークエスト文庫)を読んで、気づけばあまりの居心地のよさに2時間以上居座ってしまっていた。
 ライオンを後にして、最後はBunkamura→松濤方面へ。若者の街・渋谷からちょっと歩くと閑静な高級住宅街、というのは、知識として知ってはいても、実際に歩いてみるとやっぱり不思議。
 そうして17時半ごろ渋谷を離脱。
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 ここでノベライズ版『ポケットモンスター』について。ロケット団の登場時の口上シーンが、ひと台詞ごとに挟み込まれた地の文で毎回変化をつけられていて飽きさせず楽しい。また、各章末にふろくとして、ポケモン世界の背景を知るうえで参考になるかもしれない、ポケモン世界内の文献とされる文章が収録されていて、これが、本筋とは直接関係がないながら、読者のポケモンへの理解・興味を深める役に立つようできている。まるで子供を侮ってない。名作。そして未完。
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 続く4/17は新宿で『ゴドーを待ちながら』観劇。
 実は新宿も首藤剛志にゆかりのある土地で、というのも氏が18歳の時に書いた脚本をアニメ化したOVA『街角のメルヘン』の舞台になっている。そんなことに思いをやりながらぶらぶら歩き、新宿中央公園で『ハートキャッチプリキュア!』EDのダンスを踊っている人を生温かい目でやり過ごしながら、劇場に着いたときにはまだ開場まで時間に余裕があったので、近くのパブで一服。すると『報道ステーション』で見たことがあるゲストコメンテーターの人がそこにいた。その人が先に出て、私が後に出て、劇場に入るとやはりその人がいて一等良い席に座っていた。
 で、開演。ウラジーミル役が橋爪功で、エストラゴン役が石倉三郎。そろそろ文章が長くなってきたので雑な感想を言えば、面白かった。
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 この濃密で充実した二日間のおしまいにはちょっとしたおまけがあって、帰りの新幹線の乗り換えで降りた駅のホームで友人に全く偶然出くわして、思いがけず30分ばかりの道連れができたのでした。『lain』の最終話の時に中村隆太郎監督が駅で清水香里に行き合って天使だと思ったという、それってちょうどこんな感じだったんじゃないかしらというくらい、その時の私には救いに思えたことでした。
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 以下参考。
あるカレー屋さんのこと - 首藤剛志のふらふらファイル箱 (ムルギーについて)
名曲喫茶 - 首藤剛志のふらふらファイル箱(ライオンについて)
シナリオえーだば創作術 だれでもできる脚本家 第1回「プロの脚本家になろうと、決めた」その頃…… (ムルギーとライオンについて)
シナリオえーだば創作術 だれでもできる脚本家 第22回「街角のメルヘン」の誕生 1 (『街角のメルヘン』について)
シナリオえーだば創作術 だれでもできる脚本家 第23回「街角のメルヘン」の誕生 2 (『街角のメルヘン』について)
山本弘のSF秘密基地BLOG:追悼・首藤剛志氏 (『ようこそようこ』の聖地巡礼について、ほか首藤剛志追悼記事。#8冒頭の会話はほんとうに素晴らしい)
オリジナルスタッフが当時を語る「serial experiments lain」イベントレポート・完結編 - GIGAZINE (清水香里が天使だという話)