十粒入り五銭のキャラメル

原爆の日

 5月3日、旧日本銀行広島支店で開催されていた「調べて描くアニメーション映画『この世界の片隅に』の世界展」と片渕監督トークイベントに参加しました。
 展示の中に、子供のすずさんが歩いただろう(と調べた結果考えられる)、商店の並んだ通りを描いたものがありました。絵の横には、この通りは現在は平和記念公園の中のどこそこの道で云々、という説明が添えられている。それを読んだとき、はっとさせられました。
 平和記念公園には、三度か四度か、訪れたことがあります。いわゆる原爆ドームこそ、広島の方々のご尽力でそのままに残されていますが、ぜんたいに、穏やかに開けた公園です。
 今では何も残っていない空間のそこにもここにも、原爆投下前には建物が立ち並んでいた。
 もちろん、知識としては知っていました。そのつもりでした。でも本当には解っていなかったのだと、その絵によって気付かされたように思ったのです。それほどに、街の賑わいを、いきいきと、ありありと、見せられたように思ったのです。
 もうないものを、いくら想像してみたところで、それはどこまでも手前勝手な想像です。綿密な調査を重ねて、できるかぎり当時の姿を呼び戻そうという、片渕監督の並々ならぬご努力に敬意を表します。
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 先日、東浩紀『弱いつながり 検索ワードを探す旅』(幻冬舎)を読みました。観光と、モノとの出会いについての文章を読んで、上に述べたようなことがあったのを思い出したのでした。折しも69年目の原爆の日、平和を祈りつつ。