『風立ちぬ』 近眼であるということは、その眼が焦点を結べるより先は、もう夢の滑り込む余地だということだ。 少年堀越の近眼が見た夢の場所。彼はそれを心の裡に失わず持ち続け、自分の場所をそれと一緒にすることに全存在を賭ける。 やがて、躓き。避暑地…
古橋秀之『冬の巨人』（富士見L文庫） 新しく生まれた巨人の軽快さ、漲るばかりの快活さは、半ば滑稽なようであり、またそれがために神性を感じさせもする。神話の側の出来事を、神話に類するものを、読んだのだという印象を齎す。ミール（巨人／世界）にお…
『霧の中の風景』 テオ・アンゲロプロス追悼上映で二年半ほど前に観たのだったと思う。机上に放置されていたメモが目に止まったので、ここに書き留めておく。 ＊ 寝室で、たびたび姉は弟に創世の話をして聞かせるが、いつも途中で母に邪魔される。姉は創世の…
『血液型くん！２』 A型ちゃん：悠木碧 B型ちゃん：堀江由衣 O型ちゃん：小林ゆう AB型ちゃん：中原麻衣 どの血液型にもその声優がいるということは、その事実を思い知れば、どの血液型も嫌いになれっこないということだ。血液型差別を遥か素軽く飛び越えて…
吉本隆明『悲劇の解読』（ちくま学芸文庫） 何年掛かりで読んでるんだか、この度は、横光利一の章を読んだ。 「巴里にはリリシズムといふものが、どこにもない。」という感想の判らなさについても、望みうる最上の人物といえる岡本太郎が「旅愁の人」で言及…
『ゆるゆり なちゅやちゅみ！』 見渡す景色にあかりが口にする台詞。あかりはそれと気づかない。ごらく部のほかの三人は気づく。そこに尽きるように思う。つまり、あかりには打算というものがない、とでも言おうか。 ひるがえって冒頭、一番に来て部室を開け…
「夏色キセキ」製作委員会原作・原案；たつひこ漫画『夏色キセキ』（ヤングガンガンコミックス） 新春お慶び企画、『夏色キセキ』漫画版で片目を閉じて描かれた回数グランプリ（略称：「目−１」）の開催をここに宣言します！ ルールは至って簡単。片目を閉じ…
『魔法使いTai！』 年末年始にわたってBS11でOVA全６話が放送されたので、久しぶりに見た。 沙絵の激しい思い込みというばかりでなく、高倉先輩は、立派な先輩だなと思う。己を律することを知っている。導き手であることから逃げない。 もっとも、沙絵がいて…
『イーダ』 修道院で育ち、修道誓願を間近に控えたイーダ。自分には叔母がいることを知らされ、イーダは叔母に会いに行く。そうして叔母と二人、自らのルーツを辿る旅に出ることになる。 その後なんやかやあって、イーダは、アルトサックス奏者と一夜を共に…
『団地ともお』＃62b「双子ってどっちが上なんだともお」 佐山は双子の姉弟だ。勉強も絵も運動も、何でもできる姉・真理と、何にも取り柄のない弟・真雪。 ところが、実は真雪のほうが先に産まれたのだが一姫二太郎ともいうし何となく、という理由から姉弟に…
『ポケットモンスター ベストウイッシュ』＃54「メブキジカ！春夏秋冬勢揃い!!」 HDDレコーダーの整理中。本放送時に、これは、と思い、シリーズ中この回だけは残してあったのだった。 季節によって姿を変えるメブキジカ。ポケモンフォトグラファー・ロバー…
原爆の日に ５月３日、旧日本銀行広島支店で開催されていた「調べて描くアニメーション映画『この世界の片隅に』の世界展」と片渕監督トークイベントに参加しました。 展示の中に、子供のすずさんが歩いただろう（と調べた結果考えられる）、商店の並んだ通…
『アイカツ！ -アイドルカツドウ！-』＃89「あこがれは永遠に」 ユリカ様出演のベリーグッドモーニングシリアルのCM、尺が80秒くらいある。どういうシチュエーションで流れるんだろう。大都会のオーロラビジョンなんかに映し出されるのかな。 織姫学園長「藤…
中原中也「高橋新吉論」 最近、高橋新吉について調べることが面白くて仕方がない。自らの無知や考え及ばなさのため、他の人からすれば常識のようなちょっとした事でも、知れると大発見のようにうれしい。初学者の楽しみを味わっている。 さて、中原中也は、…
『レディ ジュエルペット』＃７「ステキなメールはレディのたしなみ」 かろんならきっと素敵なレディになれるというサフィーの見込み。あのサフィーが言うのだから間違いないと思える。 サフィー「はじめの一歩を踏み出すことって、とても勇気がいることだけ…
『シドニアの騎士』＃５「漂流」 潤滑剤を濾過して水を生成することに成功したといって喜んでいても依然大事な水ではあるし、この水はまず星白に飲んでもらって、星白から採尿した水を今度谷風が飲めば効率がいいな……と考えていたところへ助けが来る。早いよ…
『たまこラブストーリー』 折笠愛「月のTRAGEDY」を想起せずにはいられない。 さまよいあう彼らの関係は、地球と月とに似ているようで、でも違うのは、彼らには糸電話があり、糸電話の糸が、心に辿りつく道になってくれることだ。 ボールがお餅に似ている、…
D[di:]「白いかけら」 うっかり『幻影闘士バストフレモン』のことを考えていた。 OP曲「白いかけら」歌詞中の「アクロニムの手で抱きしめて」というフレーズは、この歌単体で見ればたしかに意味不明だけれど、アニメにおいて「バストフ」という言葉が "Be A …
『ヒーローバンク』 姉ちゃんな法ちゃんが滅茶苦茶もとい体当たり式で面白い。沢城みゆきのぎょわわ〜って感じの声も良い。 エンディング（「サヨナラマタイツカ」）の素晴らしさには心で静かに泣き叫ぶしかない。映像も含めて。感触だけで言えば、『爆転シ…
『ニュー・シネマ・パラダイス』 スクリーンで観られるまたとないチャンスに恵まれたので、一も二もなく出かけてきた。 私が最も胸打たれるのは、葬列が広場に辿り着き、そこで振り返ったトトが、ナポリ人館長の顔を見つける場面。 トトが村を飛び出して30年…
『世界でいちばん強くなりたい！』＃４「これがプロレスだ！」 アイドルからプロレスに転向した萩原さくらは、逆エビ固めだけで、デビューから50連続ギブアップという不名誉な記録を樹立してしまう。いつしかギブアップ慣れしてしまったさくらは、プロレス自…
『ソウルイーターノット！』＃１「死武専、入学！」 初対面のマカ先輩からの、最初の助言が「ふり向け！」というのは大変良いな。そうして変な味のドリンク。歓迎されていると感じる。頑張れそうだ、よーしやるぞー、という思いが叫びとなる。「アメリカの味…
『赤毛のアン』＃１「マシュウ・カスバート驚く」 人嫌い、女嫌いを貫いて、六十まで歳を重ねたマシュウのもとへ、そのご褒美にAnneのアンを使わしてくださるなんて、神様も粋なことをなさる。（天に向かって）私も期待してますよ！ アン「うわあカスバート…
『暴れん坊力士!! 松太郎』＃１「のたり松太郎」 加減なんてものをまるで知らなそうな松太郎が、それでもこの年まで人を殺めてしまったことがないのだとしたら、天が彼のことをよほど懇ろに臠しているのだとしか思われない。天が、というのはこの場合、相撲…
枕原作；すかぢ脚本；狗神煌作画『H2O -FOOTPRINTS IN THE SAND-』（角川コミックス・エース） まだ読み始めたばかり。 風が吹くと 風車が回って… 夕日が…海に溶けて… あじさいの …花になる （v.1, p.[59]） 「想像して」とはやみちゃんが言うとき、モノクロ…
『団地ともお』＃４b「あの坂を登っていくともお」 本放送当時『ぼくは王さま』と重なっていたために見逃していた、坂上さんとともおが出会う回を、今日のセレクション放送で見ることができた。 ともおがメロスと呼ばれるきっかけも知れたし、走って走って走…
早見裕司『小説モルダイバー』（アニメージュ文庫） 今、皆さんがこの小説を読んでいるのは1990年代のいつかだと思うのだが（まさか21世紀までのロングセラーになってはいないだろう）、つい先日、作者は知り合いの高校生からおそるべき話を聞いた。 （p.89…
細野不二彦『ギャラリーフェイク』（小学館文庫） フジタとカニの関係について、以下にまとめてみました。巻数、話数は小学館文庫版のものです。チャーハンを作ったり食べたりしている描写があっても、それがカニチャーハンであることが分明でないものについ…
『ディーふらぐ！』＃３まで 『のうりん』や『世界征服〜謀略のズヴィズダー〜』の方言はなかなも良いけれど、『ディーふらぐ！』の標準はなかなも良い。というか『ディーふらぐ！』たいへん面白い。なにしろ芦花の作るゲームが、実際センスの光るものだから…
『生徒会役員共＊』＃２まで 第１期を見てないものだから、想像していた感じと相当違ってあっけにとられた時のうた状態だった。BD版はあんな伏せ字やこんな伏せ字もばっちりクリアに聞けるのだろうか。 ＃１、「前から思ってたけど価値観が違いすぎるー」と…
