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『グッバイ、サマー』 旅の終わり、後ろ向きに飛ぶ旅客機について。 あのような不思議さを通過しなければ戻れないような旅だった。ともかくはそう思える。 パリへ帰ることは、今や後退することでしかないのだ、このイメージは成長の結果なのだ、とは考えたく…
『この世界の片隅に』 11月12日、『この世界の片隅に』を観ました。当地での初日初回は11時10分から、全100席のスクリーンでの上映で、ちょうど半分の50人ほどの客入りでした。 * 「左手で描いた世界のよう」な歪みを表すために、原作者のこうの先生は、実…
『シン・ゴジラ』 巨費を投じて作られた渾身の脱力ギャグ映画、という印象。ヤシオリ作戦の間中、あんぐり開いた口が塞がらなかった。そういう方向に面白かった。 最終作戦に当たり、作戦名が長いという矢口に、役所のすることですからと答える統合幕僚長。…
『父を探して』 父を探す少年を、未来の彼も、そのまた未来の彼もが後押しした、とも言えるだろうし、未来に亙って父を想う心を持った彼は、その時いつも少年だった、と言ってもよいだろう。ともあれ、全時代が渾然として響きあっている。
『マクベス』(2015) 「マクベスは眠りを殺した」という台詞が映画にあったかどうか、昨日観てもう思い出せない。 かねて承知の、起こるべき事どもが繰り広げられるところを、その現場を、無言で見届ける魔女たちのイメージは格好良かった。一方で、ラスト…
『仮面ライダー1号』 今この時の、本郷猛自身の口から、俺は死なん、俺は不死身だ、と聞くことできれば、もうこの先、何があっても、何があっても信じて行かれる、そう思えた。 どこにいても、誰を助けても、それは麻由を助けることだったんだ、と本郷猛は…
『劇場版 selector destructed WIXOSS』 蒼井晶を心の中で応援上映会のつもりで観に行ったら、映画自体は、せれくぎゅー ですとらくぎゅっと うぃくぎゅす、といった様相であった。 * 名乗りあう前の知らない二人が、どういう経緯でか出会い、おいしいアイ…
『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』 一年半前の下書きが目に留まったので上げておきます。 * 誰かを幸せにするということ、それには、三つのタイプがあると思う。世の中の多くの人を幸せにできる人。自分の周りの、身近な人を幸せにできる人。それと、自分…
『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』 何が神であるか。 radio guys(ラジオのDJ)に自分の歌を聴いて欲しくて、イヴはデモテープを作る。そのレーベルには "God Help the Girl" の文字が記されている。だから、まずは彼らが、イヴに救いをもたらす神であることが…
『チョコリエッタ』 原発事故などを絡めた分だけ、作品を卑小化してしまっているように思えた。というのも、思春期の懊悩煩悶は、社会的な出来事を、それがどんなに大きかろうと、はるかに飛び越えてあるものだから。 たかだか十年前の幼少期のことを、まだ…
『ラブライブ! The School Idol Movie』 劇場の大きなスクリーンだと、ライブパートの3Dキャラはどうしても見劣りがするなあ、というのがまず第一の感想。見せ場であるべきはずのところで、かえって快楽を殺してしまっているきらいがある。 * はるか異国の…
『エレファント・ソング』 マイケルが自らの運命をこれと決めたのは、チョコレートの包みを開けたときなのだろうか。咄嗟の衝動に駆られた? ところがこうも考えられる。院長と看護師長の関係や、二人の間の娘を見舞った惨事について知っていた理由を問われ…
『名探偵コナン 業火の向日葵』 ギャラリーフェイク者の私としてはこれは外せないだろうと思って観てきましたが、園子者の私としても極めて満足の行く内容でした。 オークション会場の堂々たる園子。生中継の記者会見で発情した顔を見せる園子。テレビ番組に…
『風立ちぬ』 近眼であるということは、その眼が焦点を結べるより先は、もう夢の滑り込む余地だということだ。 少年堀越の近眼が見た夢の場所。彼はそれを心の裡に失わず持ち続け、自分の場所をそれと一緒にすることに全存在を賭ける。 やがて、躓き。避暑地…
『霧の中の風景』 テオ・アンゲロプロス追悼上映で二年半ほど前に観たのだったと思う。机上に放置されていたメモが目に止まったので、ここに書き留めておく。 * 寝室で、たびたび姉は弟に創世の話をして聞かせるが、いつも途中で母に邪魔される。姉は創世の…
『ゆるゆり なちゅやちゅみ!』 見渡す景色にあかりが口にする台詞。あかりはそれと気づかない。ごらく部のほかの三人は気づく。そこに尽きるように思う。つまり、あかりには打算というものがない、とでも言おうか。 ひるがえって冒頭、一番に来て部室を開け…
『イーダ』 修道院で育ち、修道誓願を間近に控えたイーダ。自分には叔母がいることを知らされ、イーダは叔母に会いに行く。そうして叔母と二人、自らのルーツを辿る旅に出ることになる。 その後なんやかやあって、イーダは、アルトサックス奏者と一夜を共に…
原爆の日に 5月3日、旧日本銀行広島支店で開催されていた「調べて描くアニメーション映画『この世界の片隅に』の世界展」と片渕監督トークイベントに参加しました。 展示の中に、子供のすずさんが歩いただろう(と調べた結果考えられる)、商店の並んだ通…
『たまこラブストーリー』 折笠愛「月のTRAGEDY」を想起せずにはいられない。 さまよいあう彼らの関係は、地球と月とに似ているようで、でも違うのは、彼らには糸電話があり、糸電話の糸が、心に辿りつく道になってくれることだ。 ボールがお餅に似ている、…
『ニュー・シネマ・パラダイス』 スクリーンで観られるまたとないチャンスに恵まれたので、一も二もなく出かけてきた。 私が最も胸打たれるのは、葬列が広場に辿り着き、そこで振り返ったトトが、ナポリ人館長の顔を見つける場面。 トトが村を飛び出して30年…
『かぐや姫の物語』 翁が手のひらに囲っているうちはお人形さんのようだったものが、嫗に触れられることで現実的な赤子の形を取る冒頭シーンは、この映画の性格を予め我々に伝えています。男の目線と女の目線。姫が育ちゆくにつけても、翁ばかりがはしゃいじ…
『映画ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス』 全体的にそつなく。 「オムライス!」「えっ」「えっ」から六花とありすがすれ違うまでの一連が良かった。 反乱を起こすゴミが「俺はまだ使えるぞー!」と訴えるのは、人間の価値観に毒さ…
『華麗なる相続人』 最後までわくわくするところのない映画でした。 全員に動機めいたものがあって、誰も信じられないのなら、このうえはもう誰が犯人だろうとどうでもいいことじゃん、と思ってしまいます。最終的に犯人ではないことが判った夫と、だからよ…
『パリで一緒に』 たいへんお茶目で楽しい映画でした。 "Serendipity? Are you making it up?"(セレンディピティ? それあなたがこしらえた言葉?)と、言葉の理解が及ばない為に話題が途切れたと見せて、それが次の話の流れを生み、二人のより深い理解の契…
『小鳥遊六花・改 劇場版 中二病でも恋がしたい!』 第2期放送前に第0話SPとして30分枠で放送すれば済んだ話だと思う。 総集編のパートをどうしてこんな編集にしたのか、そのセンスは甚だ理解しがたいところではある。TVシリーズを再編集しておきながら、…
『鷹の爪GO 美しきエリエール消臭プラス』 本編も楽しい趣向でいっぱいでしたが、入場アナウンスをする劇場係員が目を疑いながらタイトルを読み上げるところからしてすでに楽しく、命名の勝利を感じました。 『劇場版 空の境界 「俯瞰風景」3D』 俯瞰による…
『八月の鯨』(ニュープリント版) すべては消え去ってしまう、遅かれ早かれ。 頑迷にそう主張するリビーは、しかしこのことでマラノフと口論になったとき、思わず強く言い返す。自分の記憶、自分の思い出だけは特別で、どこへも消えたりはしない、と。 夫を…
『マイマイ新子と千年の魔法』覚書 連続しないものを、意味のある連続に見せるのがモンタージュであることを意識するならば、連続して見えるものにも、本来的には連続性は存在しないのだということも分かってくる。この両面のはたらきが、モンタージュにはあ…
2012年6月に観た映画(3本) 6/2『ニーチェの馬』 画面の暗さに比して字幕が眩しすぎたように思う。もとより少ない台詞のこと、大体のやりとりは覚えたから、字幕なしでも見てみたいところだけど、劇場のスクリーンと音響で見てこその映画だし、日本で上映…
5月に観た映画(1本) いつの5月さ!てな話ではありますが。 5/20『虹色ほたる〜永遠の夏休み〜』 この映画についてどう伝えたものか、言葉が見つからなくて、それでほかの映画の感想もまるまる滞っていたのでした。そのうちに、せめてソフト化されるまで…